ネット時代の同定方法

同定とは……生き物の分類(種名等)を特定することです。

昔は、図鑑を片手に調べていくしかなかったのですが、今はネットを使うことで、素早く同定することが可能になっています。ただし、曖昧な情報も氾濫しているため、確実に種名を特定するには図鑑も未だ手放せないものですが、まったく知らない生き物を、手軽に大まかに分類するためには、やはりネットでの同定手段を知っておくことは重要です。

ここでは、ネットを活用した同定の方法について、簡単に解説してみたいと思います。


まずは画像検索

色・形・時期・場所・分かる範囲の分類群など、その生き物の特徴をキーワードとして画像検索をすることで、似たものを発見できると思います。

たとえば2月に静岡県の庭で見つけたこの植物の名前を調べてみましょう。

よく見る植物であれば、まずは「雑草 種類」で検索をしてみます。Googleの画像検索でスクロールしていくと、似たものが見つかると思います。
それらしい写真が見つからない場合は、「雑草 庭 2月 種類」や「雑草 葉に毛 ふわふわ 種類」など、特徴となりそうなキーワードを入れてみてください。
北海道や沖縄、東京島しょなど、日本の多くと環境が異なる場所で見つけたときなどには、地名をキーワードにするのも有効となります。

「種類」とキーワードに入れているので、そのページには、多くの場合種名が書いてあると思います。

また、キーワードではなく、撮影した写真そのものを使用して、検索することも可能です。
方法については「画像検索 方法」などでお調べください。
緑一色などではなかなかうまく検索できませんが、特徴的な模様があるなどであれば、それなりに有効な結果が得られることもあります。

今回は、「雑草 種類」のキーワードによる画像検索で、「オランダミミナグサ」と書いてあるページが見つかりました。

種名の確認

それらしい種名を確認したら、確認作業に移ります。
今度は「オランダミミナグサ」で検索してみましょう。
画像検索や図鑑サイトなどで、同じような姿の生き物が多く表示されていれば、ほぼ正しいと考えられます。

しかし、まだ確定することはできません。

類似種の確認

生き物は、よく似た種類がいることがしばしばあります。
同じ属の生き物などはもちろん、全く違う分類群でも、擬態や収斂進化などにより、外見が類似することがあります。
同定をする上では、それらの類似種でないことを確認しなければいけません。

「オランダミミナグサ 似ている」「オランダミミナグサ 見分け」「オランダミミナグサ 違い」
などで検索してみましょう。
紛らわしい種類がある場合は、なんらかの結果が得られるはずです。
今回は、どうやら「ミミナグサ」と似ているらしいことが分かりました。
そして、ミミナグサとオランダミミナグサの違いの解説を見て、撮った写真と見比べて、最終的にオランダミミナグサであると同定が完了します。

適当に同定しない

今回ここで解説した同定方法が使えるのは、一般的によく見られる種類かつ、外見で分類がはっきりしている種類のみになります。
個体数が少なくあまり見られない種や、分類が一般に分けられていない種、DNAレベルで解析しなければはっきりしない種などは、相応のやり方でなければ、判断ができません。
また、花が咲くまでわからないなど、時期によっては同定不可能なものもあります。

そうしたときに、適当にこの種だろうと同定完了としてしまうと、誤った情報を広めてしまうことにもなります。
そうした場合は、同定できる分類群まで、例えば「○○目の一種」「○○科の一種」「○○属の一種」などとしておくことで、誤った情報の拡散を防ぎ、さらにその分類群に詳しい人の目にとまり、同定しやすくなることにも繋がります。

一般人には見分けのつかないようなものでも、その種を数多く見てきた専門家はひと目で見分けてしまうこともよくあります。
専門家の判断を仰ぐというのも、立派な同定方法のひとつです。

 

たとえば、あまり鮮明な写真ではないこのアワビの画像を見てみましょう。

普段アワビを見慣れない人が見ると、クロアワビなのか、メガイアワビなのか、マダカアワビなのか、エゾアワビなのか、判断がつかないと思います。
しかし、アワビの研究をしていたような人が見ると、ひと目でメガイアワビだと判断することができます。
これはもう、何が違うとかではなく、慣れとしか言えないものでしょう。他人からはまったく区別のつかない一卵性双生児でも、親であれば区別できるのと同じようなものです。

AIがもっと進歩してくれば、その「慣れ」を含めて、自動で種同定のできる時代が来るのかもしれません。

同定に役立つサイト

私がよく使っている、同定に役立つサイトをいくつかご紹介します。

松江の花図鑑
植物の詳細な写真が多数見られます。

進化する昆虫図鑑
かなりの種数の昆虫写真が掲載されています。

昆虫エクスプローラ
こちらも昆虫写真大量です。さらに、環境や季節などからも検索可能です。

魚類写真資料データベース
神奈川県立生命の星・地球博物館と国立科学博物館による魚類データベースです。

WEB魚図鑑
魚図鑑といえばここ。大量の投稿画像が見られます。

学名・分類群確認に役立つサイト

学名等を確認するときには、博物館や大学などの信頼性の高い情報を確認します。

サイエンスミュージアムネット
全国の科学系博物館の情報や、自然史系の標本を検索できます。

植物和名ー学名インデックス YList
日本で見られる全ての維管束植物種が記載されているようです。

水生生物情報データベース
国立研究開発法人水産研究・教育機構が運営する、水生生物のデータベースです。

研究に有用なページのリンク
東北大学 生命科学研究科 生態発生適応科学専攻 進化生物分野の作成したリンク集です。ここから各種データベースにアクセス可能です。


はじめはなかなか種名どころかなんの仲間なのかすらわからず、同定に時間がかかってしまいますが、近い仲間がわかるようになると、一気に調べる時間が短縮されていきます。

最初のオランダミミナグサも、葉などを見てナデシコの仲間だろうな、と推測できれば種同定まではあとわずかです。

 

ネット上には、不確かな情報が大量にあるため、その中から確かな情報を選び抜く目が必要となります。
特に、図鑑サイトではないフリー素材サイトなどの写真については、種名等はまったく信頼できないと思ってもよいでしょう。
このサイトが、誤った情報を減らすための一助となれば幸いです。