スイレンの栽培
スイレンを初めて栽培する方に向けて、基本的な栽培方法を記載します。
水を貯められる容器
大きければ大きいほどよいです。小さい品種であれば水面直径30cmほどでも育成可能ですが、水面が小さいと葉を展開する美しさは楽しめません。開花はします。
土を入れて植え付ける容器(鉢)
熱帯スイレンであれば5号鉢(直径15cm程度)でもよいですが、8号鉢(直径24cm程度)以上のほうが根をしっかりと張ってよく成長します。
温帯スイレンはワンビサやマリアセアクロマテラのようなあまり根茎の伸びない品種は8号鉢でも楽しめますが、ワウ!やピンクドーンのように根茎の伸びる品種は大きい容器に植え付けたいです。
根茎のよく伸びる品種は、長いプランターを用意するか、丸い鉢であれば縁に沿うように植え付けると外周をまわりながら成長します。
土
水田の土のような泥状のものが理想です。畑の土(赤土や黒土)も育てやすい土で、うちでは畑の赤土を使用しています。
市販の野菜用の培養土は比重が軽く水中に舞うため適していません。
ホームセンター等で土を購入する場合は、赤玉土を水で練って泥状にして使用します。
肥料
水に溶け出しにくいマグァンプKが使いやすいです。
うちではマグァンプKの大粒を土の中程に入れて、シーズン中はその元肥のみで管理しています。
写真のようにペットボトルに移し替えておくと、適量を出しやすくとても便利です。
10月、11月で花のシーズンが終わり、12月になると葉もほとんどなくなります。
温帯スイレンの場合は耐寒性があるため、水を切らさないようにさえ気をつければそのまま屋外に放置していて問題ありません。
水の蒸発の管理が面倒であれば、密封して蒸発を防ぐのも手です。
熱帯スイレンの場合は、品種により耐寒性が異なります。
比較的耐寒性のある品種(ムカゴ種、マイアミローズなど)であれば、年に数度氷が張る程度(昼には溶ける程度)であればそのまま屋外に放置していても越冬に成功することが多いです。
それ以上に寒くなる場合や、あまり耐寒性のない品種(プラムクレイジーやスターオブサイアムなど)は、屋内に取り込むか、ビニルで蓋をするなどして水温低下を防ぐと越冬できます。
3月ごろ、次のシーズンに向けての準備を始めます。
ヒツジグサを除き、熱帯スイレンも温帯スイレンも、根茎で増殖します。
そのまま放置すると株が分かれて根が混み合い、成長するスペースがなくなって花を咲かせなくなります。
次のシーズンも花を見るためには、暖かくなって成長開始する前に植え替えを行います。
植え付けた容器をひっくり返し、土から株を取り出します。
古い根はすべて取り除き、成長点をひとつだけ残してほかは取り除きます。
株分けは手でちぎっても、ハサミで切っても問題ありません。
一株確保できたら、最初のセッティングと同様に土と肥料を入れて植え付けます。
土はそのまま再利用できます。
スイレンを育てていて花が咲かない、という声をよく聞きます。原因は様々ですが、大きく4つ考えられます。
1,日当たりが悪い
スイレンの開花には長時間の光が必要で、日の出から日の入りまで葉に直射日光が当たるのが理想です。
少なくとも半日は光が当たらなければ花はあまり見られないでしょう。
よく、「成長点に光が当たらなければならないので、葉は間引く」と言われることもありますが、それはあまり関係ありません。花芽形成ホルモンのフロリゲンは葉に日光が当たることで作られます。成長点に光を当てるために葉を間引く必要はありません。
2,養分が足りない
スイレンはかなり養分を必要とする植物です。養分が足りないと、花を咲かせることはありません。
特に、花をつけるために必要な養分はP(リン)です。リンを多く含む肥料(マグァンプKなど)を与えることで、花を咲かせる数が増えます。
3,根が混み合っている
スイレンは根茎で増殖するため、小さな鉢ではすぐに根が詰まって成長の余地がなくなります。
そうなると、花をつけなくなります。根が混み合うことで花を咲かせなくなるメカニズムは不明ですが、これまで栽培してきた経験上そうなっています。
それを防ぐために、年1回の植え替え&間引きを行って土の中に余裕を持たせることが必要です。
ただし、根茎で増殖しないヒツジグサは根が混み合うことがないので、植え替えをせずとも毎年花を咲かせてくれます。
4,咲きにくい品種
スイレンは品種によって花の咲きやすさがかなり違います。
大雑把には温帯スイレンより熱帯スイレンのほうが咲きやすく、ムカゴ種熱帯スイレンであれば、シーズン中毎日花が途切れることがありません。
私がこれまで育てたことのある品種では、ムラサキシキブが最も咲きやすいと感じています。
一方で、クイーンシリキットは好環境で育ててもシーズンで4つほどしか花が見られませんでした。
こればかりは対処法のしようがないため、花を多く見たい場合は、品種を選ぶ必要があります。